君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「酒はそんなに強くないのか?」
両手でグラスを持ちちびちびと飲む姿が可愛くて、じっと見つめてしまう自分を制しながら、意識を紛らわす為にたわいも無い会話を試みる。

「家では休日にちょっとだけ飲んだりしますけど、ひと缶で充分です。父に外では飲むなって強く止められてるので。」
その教えが正しかった事を、如月は1時間後に
思い知る事になる。

グラスを半分飲んだところで、千紗が如月に語り始める。

「如月先生は…なんでそんなにおモテになるんですか?私にだっていろいろな噂が耳に入って来るんですから。」
少し酔っているようで、いつもよりも遠慮ない感じが、また可愛い。
 
「どんな噂?
俺としては至って真面目に仕事をしてるし、誤解のないように誰にでも塩対応を通しているつもりだけど?」
聞き捨てならないと、如月も抵抗する。

「椎名香さん…って理事長さんの娘さんですよね?先生と婚約したとかなんとか…。それなのにこんなところで、私とご飯なんて食べてていいんですか?」
頬を染め、とろんとした目つきで睨まれても可愛いだけだがと、如月はほくそ笑みながら答える。

「誰が言ってるそんな事?あんな女性は死んでもごめんだ。そんな噂本気にしないで欲しい。今度何か良からぬ噂を聞いたら直ぐ俺に直接聞いて。」

くだらない噂話が院内を飛び交ってるみたいで、如月は遺憾に思う。

「本人が、そう言ってるみたいですよ?
如月先生はいずれうちの病院を継ぐって…。」

「…初めて聞いた。
確かに今は、外部からの問い合わせや病院以外の仕事が増えて、一時的に秘書のような仕事をしているが、ただそれだけだ。
第一俺にだって選ぶ権利はあるだろう。」
如月はため息混じりで頭を抱えた。

あの女…今度会ったらただじゃおかない。
苛立ちと嫌気で怒りが沸々と湧いてくる。

「東京の…シンポジウムで先生と親しそうだった女性も…いずれ先生と結婚するんだって言ってましたよ。」
俺の周りをチョロチョロする女はそんなヤツばっかりなのか…と、如月は頭が痛くなってきた。

「全部嘘だから、勝手に言ってるだけで俺は迷惑してるんだ。何よりも君に疑われるのが辛い。」
俺の心はこんなにも分かりやすく、目の前の千紗にしか開いていないのに、告白めいた事まで言っても何故彼女には伝わらない…?

まだ何となくまだ疑われている気配を感じながら如月はまた大きくため息を吐いた。