君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「だから、俺は君の…千紗の先輩だって事になってるから話し合わせろよ。
疑われたら昨夜の全ての俺の演技が無駄になるんだからな。」
家に向かう道中で、そう言いくるめられる。

「でも…藤堂さんって、大学2年生ですよね?
5歳も違うのに接点なんて何処にも…。」

「それは文化祭で出会ったんだと話してある。医学生だから目の病気の事で、相談されたのがきっかけだと伝えた。…君の自殺未遂は言ってないから安心しろ。」

「あ…ありがとう、ございます。」
その事については一切触れられたくなかったから、どうしても声が小さくなってしまう。

「…それについては無かった事にしてやる。だから、生きろ。俺は君の命の恩人なんだから、俺より先に死ぬのは許さないからな。」

そう諭されて、こくんと頷くしかない。

「その目の事なんだけど、看病してる間にいろいろ調べた。地方の病院に眼科の名医がいるから、ツテを辿って診て貰えるようにする。諦めるな。医療は1日1日進歩しているんだ。希望を捨てるな。」

彼の話しは明快でそれでいて分かりやすく、ぼろぼろだった私の心に響いた。

それから私の家に送り届けてくれた藤堂さんは、母に挨拶をしてサッサと帰ってしまったが、後日改めて電話をくれて、私の目の回復に手を貸したいと母に申し出てくれた。

数日経った頃、
「千紗、良かったね。良い先輩に出会えて。藤堂さんって地方にある大病院の息子さんみたいよ。」
彼の噂を何処からかせしめて来た母が、私にそう言って久しぶりの笑顔を見せた。

「なんで、そんな事知ったの?」
私がふと不思議に思って聴くと、

「千紗の担当医にそれとなく聞いてみたの。そしたら先生も彼の事を知っていて、最近千紗の事でコンタクトを取ってるんだって教えてくれたわ。」

「そうなの!?
私には何一つ言って来ないのに…。」

あの日以来、SMSで繋がって何度かメールを送り合ってはいた。

だけど私が生きてるかの安否確認や、たわいも無い話しばかりのやり取りだったから、この人は私に何を言いたいんだろう?と思うくらいで、病気の事については一切聞いて来なかった。

それなのに、知らない所で私の事をどうにかしたいと動いてくれていたなんて、心が震えるほど感動を覚えた。