君の心は奪えない



「うわーっ‼︎ほんとあのサーブ取れない!重たすぎ!」
「バレー部入らない?」
「いやいや、今バスケ部が交渉中だから!」

「こらっ!体育の時間に部活動勧誘しないの!」


クラスメイトと先生のやりとりに笑いながら、ちらりと和泉の方を見ると。

……目が、あった。
和泉も見てる。あたしの方を。

緑色のネットを通り越して、じっと。


そして、口元がかすかに動いたのが分かった。



『ナイスサーブ』



……っ!

顔が一気に熱くなる。
心臓もばくばくと高鳴って……。


和泉が、あたしを見てくれていたっていう事実が、こんなにも嬉しい。

緩んでしまいそうな口元をぎゅっと引き締めて、和泉に向かってうなずいた。


和泉は、次試合に出る番みたいで、コート内にいる男子と位置を交代した。


……がんばれ、和泉。



心の中でエールを送り、あたしはもういちどサーブを打つためのトスをあげた。