怪盗が最後に盗んだもの

午後零時。カフェのテラス席にて、一人の女が食事を摂っていた。ショートカットの黒髪に顔にあるそばかすが特徴的な彼女は、黒のシンプルなワンピースを着ている。女の名前はジョディ・ハドソン。魔法警察に所属する刑事である。

目の前に並んだ料理はおいしいのだが、ジョディの表情は食事を楽しんでいるように見えなかった。唇をキュッと結び、どこか緊張した様子である。

「ハァ……」

ジョディがため息を吐いたその時だった。目の前に一匹の猫が現れる。猫は光の粒を体に纏っていた。猫が口を開く。

『スプリング通りで事件が発生。オルコット邸に怪盗シャハルから犯行予告状が届いた。捜査員は支給現場に急行せよ!』

猫はそれだけを言うと消えてしまう。ジョディは「怪盗シャハル……」と呟きながら立ち上がった。怪盗シャハルはジョディが追い続けている宿敵のような存在である。

怪盗シャハルは、黒いシルクハットやマントが特徴的で、各国の貴重な宝石や美術品を盗み出している。どんな厳重な警備や魔法も容易く潜り抜け、いつも煙のように消えてしまうのだ。

「今日で全てを終わらせる!」