あの子、どこにもいない


「特定班」の住民が消えた。
それから二日が経った。

スレに残っていた者たちは、何もできずにいた。
誰もが「次は自分の番ではないか」と怯え、書き込みを避けるようになった。

そして、7月15日の夜。
彼らの恐怖は、ある「異常な出来事」によって、さらに深まることになる。

2008年7月15日 22:30
スレの住民の一人が、偶然あることに気づいた。

  ---------------------
  1 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:30:12 ID:Mx8H7QhG0
  ……なあ、お前ら。
  
  2 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:30:30 ID:N2Lm5XbB0
  どうした?
  
  3 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:30:50 ID:Mx8H7QhG0
  【中学生専用】スレ、もう消えたよな?
  ---------------------

住民たちは、ぞっとした。

  ---------------------
  4 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:31:10 ID:XfT3M8G50
  そりゃそうだろ、7日に削除されたんだから。
  
  5 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:31:30 ID:Mx8H7QhG0
  ……おかしいんだよ。
  
  6 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:31:50 ID:N2Lm5XbB0
  何が?
  ---------------------

彼は、恐る恐る書き込んだ。

  ---------------------
  7 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:32:10 ID:Mx8H7QhG0
  さっき、試しに【中学生専用】スレを検索してみたんだ。
  そしたら……「まだある」。
  ---------------------

スレ住民たちは、全員が凍りついた。

  ---------------------
  8 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:32:45 ID:XfT3M8G50
  は???????
  
  9 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:33:10 ID:N2Lm5XbB0
  いや、ありえないだろ、それは。
  ---------------------

【中学生専用】スレは、すでに削除済みのはずだった。
しかし、彼が検索すると、スレのURLが「存在していた」のだ。

そして、恐る恐るそのスレを開いてみた。

  ---------------------
  10 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:33:30 ID:Mx8H7QhG0
  開いた……
  ---------------------

スレには、たった一つの書き込みだけが残っていた。

  ---------------------
  1 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:33:50 ID:g5t8X7Jh0
  ねえ、また新しい友達ができたよ。
  ---------------------

住民たちは、一瞬で理解した。
「みゆ」が、まだそこにいる。

  ---------------------
  11 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:34:10 ID:XfT3M8G50
  もう終わりだろ、これ……
  
  12 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:34:30 ID:Mx8H7QhG0
  いや、まだある。
  ---------------------

彼は震える手で、もう一度スレの内容をスクロールした。

  ---------------------
  13 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:34:50 ID:Mx8H7QhG0
  書き込みが、増えてる。
  
  14 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:35:10 ID:N2Lm5XbB0
  え???????
  ---------------------

そのスレは、誰もアクセスできないはずだった。
しかし、今も「書き込み」が増え続けていた。

  ---------------------
  15 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:35:30 ID:Mx8H7QhG0
  みゆ、かな、そいつらだけじゃない。
  他の名前も増えてる。
  ---------------------

──そこに書かれていたのは、スレ住民たちの「知っている名前」だった。

7月10日に消えた特定班のID。
6月19日に消えた特定班のID。
そして、もっと前に消えた住民たちのID。

彼らは、すでに「いない」はずだった。

しかし、そのスレには、彼らのIDが「まだ書き込みを続けている」ように表示されていた。

  ---------------------
  16 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:36:00 ID:Mx8H7QhG0
  ……みんな、どこかでまだ生きてるってことか?
  
  17 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:36:20 ID:XfT3M8G50
  いや、そんなわけないだろ……
  ---------------------

──そして、最後の書き込みが追加された。

  ---------------------
  18 :名無しの中学生 :2008/07/15(火) 22:36:45 ID:g5t8X7Jh0
  ねえ、あなたも、こっちに来る?
  ---------------------

スレ住民たちは、すぐにPCを閉じた。

──そして、彼らのスマホが同時に鳴り響いた。

「ピロン♪」

それは、またしても「みゆ」からのメッセージだった。

  ---------------------
  19 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:37:10 ID:Mx8H7QhG0
  無理だ。もう、無理だ。
  ---------------------

しかし、それが終わりではなかった。

──次の瞬間、スレ住民のスマホの画面が、一斉に「強制的に」切り替わった。

そこに表示されていたのは、【中学生専用】スレのURL。

  ---------------------
  20 :名無しの中学生(生存者) :2008/07/15(火) 22:37:45 ID:Mx8H7QhG0
  おい、勝手に、このサイトが開いたんだが……
  ---------------------

──スレは、消えてなどいなかった。
それどころか、彼らが逃げられないように、「呼び戻している」