貴方ともう一度、恋の夢を

 嫌だ、行きたくない。


 そう思っているのに、従わなかったらどうなるかを知っているかのように、この身体は動いた。

 扉を開けると、男はニヤリと笑っている。
 なんとも不気味な笑みだ。


「光栄に思え、桜子。お前が神の嫁に選ばれた」


 神の、嫁?
 理解し難い単語に、反応ができない。


「最近は雨が多いだろう? これはきっと、神が花嫁を探しているからだろうということになってな。そこでお前が選ばれたんだ」


 本当に意味がわからない。


 だけど、冗談を言っているようにも見えない。
 理解が追いつかなくて、私はまだ、なにも言えなかった。


「数日後、儀式を行うことになった。それまで、大人しくしているように」


 男はそう言うと、扉を閉めた。
 独りの部屋に、雨音が響く。
 まるで、絶望の世界へ招かれているよう。


「私が、花嫁だなんて……黎夜(れいや)様になんて説明すればいいの……」


 勝手に動いた口から出てきた名、黎夜。


 もしかしてこれが、あの人の名前?
 名前までカッコイイなんて、ズルい人。


 だけど、私のときめいている心よりも、桜子が抱いている不安のほうが大きくて、私の感情は見事に飲み込まれた。