貴方ともう一度、恋の夢を

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 遠くで、猫の鳴き声が聞こえる。
 何度も何度も聞こえるから、目を覚ませと言われているような感覚になってくる。


 ゆっくりと瞼を開けると、大木の下で、背中を木の幹に預けて寝ていたことに気付いた。


 知らない場所、そして、桜柄の着物という知らない服。


 ……これ、夢だ。


 ということは、またあの人に会える?
 そんな淡い期待を抱いていると、膝元に黒猫が擦り寄ってきた。


 さっき聞こえてきた声の子だろうか。
 そっと手を伸ばし、黒猫の頭に触れる。


 すると、その子と目が合った。青く、吸い込まれそうな瞳と。


 青眼の黒猫は、記憶に新しい。
 もしかして、今朝見かけた黒猫と同じ子だろうか。
 あのとき、妙に目が離せなかったから、夢にまで出てきたのかもしれない。


「桜子」


 すると、名を呼ばれた。
 私の名前ではないけど、ずっと引っかかっている名前が聞こえ、私の中で期待が膨らむ。


 きっと、あの人に呼ばれたんだ。


 声がしたほうへ視界が動くと、そこには顰め面をした男の人がいた。


「伯父様……」


 私が誰だろうと思ったのと同時に、口が動いた。


 知り合いなんだ……それにしては、なんだか嫌な感じがする……


 ああ、見つかってしまった。


 私ではない、桜子がそう思った気がした。


 桜子の中に芽生えたこの感情は、なに? 恐怖?


「お前、また勝手に家を出たな」


 男の怒りが込められた声は、私も恐ろしく感じた。


 喉が締め付けられ、声が出ない。そうして私が固まっている間にも、その男はこちらに近づいてくる。
 ついに目の前に立った男は、手を伸ばしてきた。