貴方ともう一度、恋の夢を

 緋翠の妙な言葉に、つい足を止めてしまった。


 振り返れば、緋翠はまた薄ら笑いを浮かべている。
 これはろくなことを考えていない顔だ。


「いやなに、人の世で面白い夢を探していたのだけれど、君と桜子の過去を夢見ている子がいたのだよ。あれはきっと、桜子の生まれ変わりだね」


 桜子の、生まれ変わり……


『生まれ変わっても、また、君を見つける』


 夢を見たからか、過去の自分の言葉とそれを聞いた桜子の顔が脳裏によぎった。


 何十年、いや、何百年も逢いたいと願った、愛しい人。
 また、桜子に逢えるかもしれない。


「……だから?」


 今すぐにでも駆け出したい気持ちを抑えて、興味のないフリをする。


「逢いに行かないのかい?」


 案の定、緋翠は驚き、つまらなそうにした。


 やはり、俺を暇つぶしに使おうとしていたらしい。
 おもちゃにされるのは、ごめんだ。


「……行かない」


 俺は猫に姿を変え、今度こそその場を離れた。


 慣れてしまった、妖の世。
 毎日祭りのように騒ぐ奴らの足元を、踏まれないように掻い潜りながら進んでいく。


 緋翠にはああ言ったが、どうにも気になってしまい、俺は人の世に出た。


 先刻すれ違った、妙に気になる娘。
 あれがきっと、桜子の生まれ変わりなのだろう。


 あれが……


「猫ちゃん?」


 無意識にたどり着いたのは、桜子の最期の場所。
 そして、あの娘と出会った場所。


 しかし、まさか娘に声をかけられるなんて。