✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
「椿」
「・・・っ、それ、ずるすぎなんですけど」
「んーでも、椿がほんとに足りないから。おいで」
ソファの上、手を広げてみせる嗣翠。
灰街からこそこそ帰ってきてすぐこれだ。嬉しいものだから困る。
「・・・・・・」
「・・・かわいい。愛してる」
前みたいに、嗣翠の膝に横座りして抱きつくと、嗣翠は嬉しそうに抱きしめ返してくれた。
・・・あったかくて、大好きだ。
ううん、愛してる。
「椿。キスしよ」
「ん・・・っ」
深く、深く。
嗣翠のキスはいつも容赦がない。
私をいっぱい求めて、私にいっぱい嗣翠をくれる。
「口開けて、そう。上手。舌入れるよ」
「い、わないで・・・・・・!」
ちょっと苦しくて、だけど大好きで、愛していて。
そのとき。
「・・・んんっ、う、ちょ、しすい、どこに手入れて・・・っ」
「どこって?そうだな、腰から上――」
「言って欲しいんじゃなくて・・・!」
ズボンから服を引っ張り出して、直接お腹に触れてくる。
くすぐったくて恥ずかしくて嗣翠の手を止めようとしたけど、男の人の力には流石に敵わない。
「待って、だめ、そこはくすぐった、ひゃ」
「かわい」
「嗣翠…!」
慣れない感覚にびっくりして嗣翠にしがみつくと、嗣翠は嬉しそうに笑った。
「椿、今日は大胆だね」
「しすいのばか、いじわる」
「ふは」
いつも嗣翠はすっごく深いキスしてくるくせに、私が自分から抱きついただけで大胆とか言う。
私が子供っぽいって言われるみたいでなんか負けた気分だ。
・・・恥ずかしいのは事実だけ、ふひゃ、ちょ、まじでくすぐったい・・・!
「へんたい!」
「今更だよ」
「はれんち!」
「それも今更」
「愛してる!」
「俺も」
「ん、ぅ」
不意打ちだったら私から言えるし、やり返せるかもって、思ったのに。
私の急な告白にもさらりと返し、嗣翠はまた深く口づけてくる。
「・・・俺の、椿。・・・俺の女」
獣みたいに獰猛な目が、開き切った真っ黒で底なしの瞳孔が、私を真っ直ぐ縫い止める。
・・・ああ、また、逃げられない。
「ふ、ん・・・」
私が暴かれていく。
いつの間にか押し倒されていたソファの上、絶対に一線を超えない自信のある安心と寂しさ。
大好き、恥ずかしい、好き、愛してる、恥ずかしい、寂しい。
もうなにもかもわからなくなって、背中をなぞった手に従ってのけぞった。
「ひゃ、も、くすぐったいってば・・・・・・!」
「知ってる。だからやってる」
「あほ!」
「ごめん。それ、かわいいだけ」
「っ」
照れ隠しに罵倒なんかしちゃいけないってわかっているのについ出てしまう言葉。
それすら受け入れられてしまったら、私は一体どうすればいいんだろう。
「よし。じゃあ、ベッド行こうか」
「じゃあってなにじゃあって」
「キスするだけだから」
ベッドのほうが背中に負担かからないから、とか。
ほらまた、私のことばっかり優先して。
でもそれが嬉しくて、嗣翠は私で頭がいっぱいなのかな、なんて。
「・・・嗣翠、愛してる」
「え?抱き潰していいってこと?」
「そ、それはぜんぶ終わってからじゃないとだめ!」
「・・・へー」
嗣翠が、獲物を捉える猛獣の瞳をすっと細めた。
にしても嗣翠が暴走寸前・・・!
さ、さすがにキスより向こうは今はだめ!
「まあ、とりあえず今日はキスで許してあげる」
「ど、どうも」
ふわりとベッドに下ろされて、すぐに嗣翠が覆い被さってきた。
うう、この体勢なんかすっごく・・・すっごく、アレだ・・・っ!
「じゃあ椿からキスして」
「えっ?」
「深いやつね。目は開けてて」
「ええっ?」
「最低15秒」
なっが。
最低ってなによ。しかも深いやつって。
「じゃないとやっぱり抱き潰す」
「そんな理不尽な」
思ったより我慢の限界だったらしい。
そしたらキスはもっと危ない気がするけど、嗣翠は嫌なことは絶対しないから大丈夫だろう。
・・・うん、大丈夫、だよね。
ええい、もうどうにでもなれ!
「・・・ん」
「・・・・・・・・・」
唇を重ねる。
言われた通りに目を開けていると、至上の顔がすぐ近くで私を見ていた。
恥ずかしいのに、嗣翠の真っ黒な目と目が合って、逸らせない。
・・・また、つかまった。
「・・・しすい」
「・・・・・・・・・・・・」
ゆっくりと舌を絡める。
自分からやるのは慣れないけど、ちょっと、悪くない気も・・・いやでも恥ずかしい。死んじゃう。
うう、15秒って長い・・・!
「・・・やっぱまだだめ、足りない」
「んっ⁉︎」
ようやく15秒経って解放されると思ったのに、気づけば後頭部をぐっと引き寄せられていた。
体と唇が密着して、お互いの心臓が溶け合う。
顔が熱い。
でもそれすらどうでもよくなってしまった。
頭がほわほわして、ベッドに一体化しちゃうんじゃないかってくらい体から力が抜ける。
「…ぅぁ」
すき、しすい、すき、あいしてる。
その一心で首に手を回せば、一層キスは激しくなっていく。
「・・・ほんと、椿って煽るの上手いね」
「あお・・・る?」
頭が回らない。ふにゃふにゃして、嗣翠で頭がいっぱいになる。
そんな中、嗣翠は腕をぐっと捲ってまた私に覆い被さった。
「理性壊れそう、まじで・・・。あとちょっと付き合って」
「んう」
鎖骨とか、首筋とか、肩口とか、いろいろなところに痕をつけられて。
深い深いキスに、飲み込まれて。
私、やっぱりこの人を愛してるんだなって思う。
「・・・愛してる」
それを言ったのは私と嗣翠、どっちだっただろうか。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼



