なんとか撮影を終える。
もう随分と時間が経った後だった。
帰ってやろうかと思いつつも別れた場所まで戻ると,彼はそれでもまだ待っていた。
スマホを触るでもなく,広げた足の真ん中に両手を組んで,風を感じるようにぼうと宙に視線をおいている。
絵になる人だと,少し妬けた。
「……終わったわよ」
「ん。お疲れさま」
彼は,ふわりと笑った。
これから,どこに連れていかれるのだろうか。
お互い無言のまま,隣を歩く。
周りの注目を一身に浴びる彼は,相変わらずふわわんとした表情をしている割に感情が読めない。
私はと言えば,頭を必死に働かせながらも,顔が割れないようにとマスクをひたすら片手で押さえる変な女と化していた。
こんなとこ撮られたら終わるっ……!!
どこに行くって,あの雰囲気と流れからして……
「じゃ,電車乗ろうか。定期持ってる?」
「な……ない」
「じゃあ切符買ってくるから。待っててくださいね」
電車?
え,え?



