「はいカーーーット! 誰だね君は!!!!」
「え? カット?」
呆然と若い男の顔と自身の手首を見つめる私。
怒ったように裏返る声に,私はハッとした。
「ちょっと……」
茶髪のボブを困惑するように押さえるのは,さっきまで言葉を交わしていた真理奈役の楓。
「嘘でしょ……?」
私達は二人揃ってため息をついた。
「今さ」
「うん」
「「めっちゃ良かったよね……っ!」」
悔しさのあまり顔を見合わせる。
あと少しだったと言うのに。
誰だと言うのだろう。
私の手を掴んではいるものの,知り合いでは絶対にない。
「なんなんですか!!」
思わずムッと睨み付けて,はたと思い出す。
この人,"いいわけない"って,言った?
まるで,あのセリフへの返答のように。
困惑した様子の男に,私はこっちのセリフだと眉を下げた。
「もう! こっち来て!! どうせもう休憩でしょ!」



