「私ね」
小さく揺れながら,ゴンドラが少しずつ傾きを見せたころ。
私は外に目を向けながらぽつりと彼に話しかける。
彼が聞いているのは,見なくても分かった。
「今日,ホテルにでも連れ込まれるのかと思った」
突然のカミングアウトに,彼が困ったように笑ったのが分かる。
私はそんな自分が恥ずかしくて,やっぱり顔を向けることが出来なかった。
「そんな性急で最低なこと,しないよ僕。ただの普通のデートだってば」
「そうなんでしょうね」
ぱちりと1つ瞬きをする。
「だから,良かったって言ったの。あんな誘うような真似しておいて,まだ処女だったから」
今度こそ,彼は初めて言葉に困る。
してやったりと,私も初めて小さく笑みを落とした。
「どうして来てくれたの?」
「……どうしてだろう。そうね,あなたの言う通り,寂しかったからかも。それか……あなたが勝手な約束通り私を待っていてくれたからかしら」
いたずらに笑う。
素で落ちた笑みだった。
頬杖をつく右手の指を,もて余したように動かして顎を撫でる。



