本当の愛を知るまでは

パーティーが始まり、皆で乾杯してから食事と歓談の時間になる。
次々とゲストが挨拶に来て、光星と花純はにこやかに応えていた。

光星が仕事の話をしているのを隣で聞いていた花純は、ふいに後ろから「カスミ」と声をかけられる。
振り向くと、先ほどのアンドリューが立っていた。

『カスミ、あとでコウセイと話がしたいんだけど、いいかな?』

花純が向き直って返事をしようとすると、光星は他のゲストと会話しながらも、花純のウエストを抱く手に力を込める。

「光星さん、大丈夫だから」

小声でささやくと、花純はスルッと光星の手を解いてアンドリューを振り返った。

『分かりました。あとで光星さんにあなたのところに行くように伝えますね』
『頼むよ、ありがとう。大きなビジネスの話なんだ。コウセイが手を貸してくると助かると思ってね。真面目な話をしたいと伝えておいて。あと、カスミには手を出さないからって』
『分かりました、伝えておきます』
『ありがとう。じゃあね』

アンドリューが手を挙げて去って行くと、花純はまた光星の隣に戻る。
光星は花純の肩を抱き寄せてゲストと会話を終わらせ、バルコニーに向かった。

「花純、アンドリューと何の話を?」
「あとで光星さんと真剣に話がしたいって。大きなビジネスの話で、光星さんが手を貸してくれると助かるって言ってました」
「ふうん、何だろう。まあ、ああ見えて10代で会社を立ち上げてあっという間に大きくした優秀な社長だからな。俺も尊敬してる。花純にさえ手を出さなければ」
「アンドリュー、そう言ってました」
「君に? 手を出さないって? へえ、珍しい」

アンドリューを目で探すと、大勢のゲストに囲まれている。
光星と花純は先に料理を楽しむことにした。

「今夜の花純は本当に綺麗だ。二人でディナーに行きたかったな」
「私はパーティーで良かったです」
「どうして?」
「だって、こんなにかっこいい光星さんと二人きりになったら、緊張しちゃうから」

光星は少し驚いてからニヤリと笑う。

「そんな可愛いことまで言ってくれるなんて。花純、このままパーティー抜け出してどこかへ行こうか」
「ダメ! アンドリューのお話もまだ聞いてないんですよ?」
「分かってるよ。さっさと聞いてとっとと帰ろうか」

冗談とも本気ともつかない口調でそう言うと、光星は花純の手を取ってアンドリューのもとへ向かった。