「花純、何か気になってる?」
夕食を食べながら、光星が切り出す。
「え、何かって?」
花純が聞き返すと、光星は手を止めて真っ直ぐに花純を見つめた。
「花純、俺たちは何でも素直に気持ちを伝え合うって決めただろ? 花純が今思ってることを伝えてほしい」
「あの、特に相談とか悩んでることはないです」
「それでもいいから、考えてることを話して」
「えっと、考えてたのは……」
「うん、なに?」
花純はとりとめのないまま話し出した。
「さっき、オフィスで光星さんが女性の社員さんと話してたでしょう? それを見て、ちょっと自信がなくなったの。光星さんの隣にふさわしいのはこういう大人の女性なんだろうなって。光星さんは社長だもの、私とは身分が違いすぎる。それに、今までパーティーにあの人と一緒に行ってたんだって想像したら、なんだかちょっと、ヤキモチ焼いちゃって……。つまらないこと考えてごめんなさい」
シンと沈黙が広がり、花純は耐え切れずに顔を上げる。
「あの、光星さん? もしかして、気を悪くした? ほんとにごめんなさい」
「違う、嬉しくて」
え?と花純は首をかしげた。
光星は見たこともないほど、嬉しそうに頬を緩めてうつむいている。
「花純がヤキモチ焼いてくれるなんて。俺のこと、そんなふうに見てくれたのが嬉しくて仕方ない」
「え、あの。どうして?」
「だって花純に比べて、俺の方が何倍も花純を好きな自覚があったから。ひと回りも年下の滝沢くんや、なんなら臼井にすら嫉妬するくらいに、花純が好きで好きでたまらなかった。俺だけがこんなに恋焦がれてると思ってた。けど、花純も俺にそんな気持ちを持ってくれたなんて。たとえほんの少しのヤキモチでも、すごく嬉しい」
そうだったのかと、花純は驚く。
まさかヤキモチを焼いて喜ばれるとは思ってもみなかった。
「花純」
「はい」
「もし良ければ、なんだけど」
光星はためらいがちにうつむく。
「なあに?」
「……来週のパーティー、花純と一緒に行きたい」
えっ!と、花純は手から箸を落としそうになった。
「ま、まさかそんな。大切なお仕事のパーティーに、社員でもない私が行くなんて」
必死にかぶりを振ると、光星は真剣な眼差しで再び口を開く。
「社員じゃなくても問題ない。皆、パートナーの女性と一緒に来るんだ。奥さんだったり恋人だったりするけど、外国の人はいちいち肩書なんて気にしない。大切なパートナーには変わりないから」
「あの、でも、そしたら私は?」
「もちろん、俺の大切なパートナーだ」
きっぱりとそう言う光星に、花純はドギマギした。
「花純、そんなに堅苦しく考えないで。外資系企業の主催だから、みんなで楽しく歓談する気軽な立食パーティーなんだ。花純と一緒に行けたら俺も嬉しい。退屈なら、すぐに抜けるから」
それなら敷居もそんなに高くないかもしれない。
「でも、本当に私で大丈夫なの?」
「もちろん」
「それなら、はい。分かりました」
「ほんとに!? ありがとう、花純。美味しいものたくさん食べられるから」
「え、それが目当てなの?」
「半分ね」
ふふっと花純は笑みをもらす。
「じゃあ花純、来週の金曜日の夜、空けておいて」
「はい。あっ、でも、どんな格好で行けばいい?」
「パーティー衣装のブティックで支度してから行くから、心配しないで」
「そうなんですね。ちょっと楽しみになってきました」
「そう? 良かった。俺なんて、めちゃくちゃ楽しみで仕方ない」
嬉しそうな光星に、先ほどまでの暗い気持ちも忘れて花純も微笑んだ。
夕食を食べながら、光星が切り出す。
「え、何かって?」
花純が聞き返すと、光星は手を止めて真っ直ぐに花純を見つめた。
「花純、俺たちは何でも素直に気持ちを伝え合うって決めただろ? 花純が今思ってることを伝えてほしい」
「あの、特に相談とか悩んでることはないです」
「それでもいいから、考えてることを話して」
「えっと、考えてたのは……」
「うん、なに?」
花純はとりとめのないまま話し出した。
「さっき、オフィスで光星さんが女性の社員さんと話してたでしょう? それを見て、ちょっと自信がなくなったの。光星さんの隣にふさわしいのはこういう大人の女性なんだろうなって。光星さんは社長だもの、私とは身分が違いすぎる。それに、今までパーティーにあの人と一緒に行ってたんだって想像したら、なんだかちょっと、ヤキモチ焼いちゃって……。つまらないこと考えてごめんなさい」
シンと沈黙が広がり、花純は耐え切れずに顔を上げる。
「あの、光星さん? もしかして、気を悪くした? ほんとにごめんなさい」
「違う、嬉しくて」
え?と花純は首をかしげた。
光星は見たこともないほど、嬉しそうに頬を緩めてうつむいている。
「花純がヤキモチ焼いてくれるなんて。俺のこと、そんなふうに見てくれたのが嬉しくて仕方ない」
「え、あの。どうして?」
「だって花純に比べて、俺の方が何倍も花純を好きな自覚があったから。ひと回りも年下の滝沢くんや、なんなら臼井にすら嫉妬するくらいに、花純が好きで好きでたまらなかった。俺だけがこんなに恋焦がれてると思ってた。けど、花純も俺にそんな気持ちを持ってくれたなんて。たとえほんの少しのヤキモチでも、すごく嬉しい」
そうだったのかと、花純は驚く。
まさかヤキモチを焼いて喜ばれるとは思ってもみなかった。
「花純」
「はい」
「もし良ければ、なんだけど」
光星はためらいがちにうつむく。
「なあに?」
「……来週のパーティー、花純と一緒に行きたい」
えっ!と、花純は手から箸を落としそうになった。
「ま、まさかそんな。大切なお仕事のパーティーに、社員でもない私が行くなんて」
必死にかぶりを振ると、光星は真剣な眼差しで再び口を開く。
「社員じゃなくても問題ない。皆、パートナーの女性と一緒に来るんだ。奥さんだったり恋人だったりするけど、外国の人はいちいち肩書なんて気にしない。大切なパートナーには変わりないから」
「あの、でも、そしたら私は?」
「もちろん、俺の大切なパートナーだ」
きっぱりとそう言う光星に、花純はドギマギした。
「花純、そんなに堅苦しく考えないで。外資系企業の主催だから、みんなで楽しく歓談する気軽な立食パーティーなんだ。花純と一緒に行けたら俺も嬉しい。退屈なら、すぐに抜けるから」
それなら敷居もそんなに高くないかもしれない。
「でも、本当に私で大丈夫なの?」
「もちろん」
「それなら、はい。分かりました」
「ほんとに!? ありがとう、花純。美味しいものたくさん食べられるから」
「え、それが目当てなの?」
「半分ね」
ふふっと花純は笑みをもらす。
「じゃあ花純、来週の金曜日の夜、空けておいて」
「はい。あっ、でも、どんな格好で行けばいい?」
「パーティー衣装のブティックで支度してから行くから、心配しないで」
「そうなんですね。ちょっと楽しみになってきました」
「そう? 良かった。俺なんて、めちゃくちゃ楽しみで仕方ない」
嬉しそうな光星に、先ほどまでの暗い気持ちも忘れて花純も微笑んだ。



