本当の愛を知るまでは

「それじゃあ、また」

車で花純をマンションまで送り届けると、光星は花純に着替えの紙袋を渡した。

「ありがとうございます。あの、こんなに素敵な浴衣までいただいてしまって……」
「俺が勝手に贈ったんだから、気にしないで。こちらこそ、急につき合わせてしまってごめん」
「いいえ、嬉しかったです。浴衣を着て特等席で花火が見られて。臼井さんのお料理も相変わらず美味しくて、そう!シイタケも。ふふっ」

花純の可憐な笑顔に見とれつつ、光星はほんの少し複雑な気持ちになる。

「じゃあ、また連絡する」
「はい」

肩に手を置いてそっと頬に口づけると、花純はほんのり赤くなった。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

はにかんだ笑みでそう言うと、花純は浴衣の足元を気にしながらうつむき加減で歩き出す。
綺麗なその後ろ姿を、光星は優しく見守った。