「とっても美味しいです。このソースはバルサミコ酢ですか?」
「さ、左様でございます。赤ワインと、はちみつが隠し味でして……」
「そうなんですね」
花純と会話しつつ、臼井は光星の視線を避けるように顔をそむけている。
「このチキンソテーのソースは? 粒マスタードと、バターかな?」
「は、はい。あとは醤油とみりんも……」
「そうなんですね? 和風のお料理にも使えそう」
「ええ、ぜひ」
これ以上は耐えられないと思ったのか、臼井はメインディッシュの皿を置くとお辞儀をして退室した。
「臼井さん、パティシエなのにこんなフルコースのお料理も作れるんですね。すごい方ですね」
ようやく二人きりになれたのに、花純は臼井に気を取られてばかりいる。
あいつめー!と心の中で睨みを利かせてから、光星はにこやかに笑いかけた。
「君も料理に詳しいんだね。自分で作るの?」
「はい、簡単なものばかりですけど。だから余計に臼井さんを尊敬します。いいなあ、お料理上手でお菓子も作れるなんて。彼女さん、うらやましい。あ、ご結婚されてるとか?」
「いや、独身だよ。俺もあいつも」
「そうなんですね」
そう言ってフォークでチキンを口に運ぶ花純に、これはチャンスとばかりに光星は聞いてみた。
「君も結婚はまだ? 今おつき合いしてる人との予定は?」
「全然ないです。ずっと恋人もいませんし」
「そうなの?」
ぱあーっと心の中が明るくなる。
(ってことは、昨日の滝沢くんともつき合ってないってことか)
だがここでがっついてはいけない。
落ち着いて、余裕を持って、と己に言い聞かせた。
「さ、左様でございます。赤ワインと、はちみつが隠し味でして……」
「そうなんですね」
花純と会話しつつ、臼井は光星の視線を避けるように顔をそむけている。
「このチキンソテーのソースは? 粒マスタードと、バターかな?」
「は、はい。あとは醤油とみりんも……」
「そうなんですね? 和風のお料理にも使えそう」
「ええ、ぜひ」
これ以上は耐えられないと思ったのか、臼井はメインディッシュの皿を置くとお辞儀をして退室した。
「臼井さん、パティシエなのにこんなフルコースのお料理も作れるんですね。すごい方ですね」
ようやく二人きりになれたのに、花純は臼井に気を取られてばかりいる。
あいつめー!と心の中で睨みを利かせてから、光星はにこやかに笑いかけた。
「君も料理に詳しいんだね。自分で作るの?」
「はい、簡単なものばかりですけど。だから余計に臼井さんを尊敬します。いいなあ、お料理上手でお菓子も作れるなんて。彼女さん、うらやましい。あ、ご結婚されてるとか?」
「いや、独身だよ。俺もあいつも」
「そうなんですね」
そう言ってフォークでチキンを口に運ぶ花純に、これはチャンスとばかりに光星は聞いてみた。
「君も結婚はまだ? 今おつき合いしてる人との予定は?」
「全然ないです。ずっと恋人もいませんし」
「そうなの?」
ぱあーっと心の中が明るくなる。
(ってことは、昨日の滝沢くんともつき合ってないってことか)
だがここでがっついてはいけない。
落ち着いて、余裕を持って、と己に言い聞かせた。



