ローテーブルに並べた材料を前に、顔を寄せ合う二人に、光星はハラハラしっぱなしだった。
「クッキーは甘さ控えめで硬めに、あと表面を平らに薄く作ることがポイントです。そしてこの絞り袋はコルネというのですが、2種類のアイシングクリームが入っています。1つは土台塗りに使う柔らかめのアイシング。もう1つは飾りや模様を描く硬めのアイシングです。色はお好みで食紅でつけます」
花純は熱心に臼井の説明に耳を傾けている。
「では早速やってみましょうか。森川さん、好きな形のクッキーを選んでください」
「はい。じゃあ、このお星さまにします」
「かしこまりました。まずはこのコルネを絞りながら、全体的にクリームを塗ってください。そのあと、こちらのコルネで好きな模様を描きます」
言われた通りに花純はクッキーを色づけていく。
「うん、いいですね。ぷくっと膨らむくらいたっぷり載せていいですよ」
「あ! クッキーがちょっと割れちゃった」
「大丈夫ですよ。アイシングクリームを接着剤みたいにすれば、ほら! くっつきました。その上からまた塗ってください」
「ほんとだ。失敗知らずでいいですね」
臼井と花純は、もう顔をくっつけんばかりの近さだった。
「このラインを、たとえば爪楊枝でひっかくようにすると綺麗な模様になりますよ。ラテアートみたいに。ほら」
「すごい! え、結構簡単に出来るんですね」
「でしょ? うん、森川さんのも上手です」
「ふふ、すごく楽しいです」
「じゃあ、レース模様にも挑戦してみますか? 例えばこんなふうに、点をたくさん並べてから半円で結んで……」
「なんて芸術的!」
花純は夢中で次々と模様を描いていく。
途中でふと顔を上げ、臼井の手元を見て声を上げた。
「う、臼井さん! 指輪にクリーム塗ってます?」
「ははは! これはフラワーネールという土台ですよ。ここにバラ口金でアイシングを花びらみたいに絞るんです。何枚も重ねると、ほら」
「わあ、バラのお花!」
花純はこぼれ落ちそうなほど目を見開き、両手で口元を覆って感激している。
「なんて素敵なの。臼井さん、もう魔法使いみたい」
「ははっ、そんなに喜んでいただけると……」
そこまで言うと、臼井は一気に青ざめた。
鋭い視線を向ける光星とバッチリ目が合っている。
「あ、で、では、お食事の準備をいたしますね。失礼します」
臼井は逃げるようにそそくさと去って行った。
「クッキーは甘さ控えめで硬めに、あと表面を平らに薄く作ることがポイントです。そしてこの絞り袋はコルネというのですが、2種類のアイシングクリームが入っています。1つは土台塗りに使う柔らかめのアイシング。もう1つは飾りや模様を描く硬めのアイシングです。色はお好みで食紅でつけます」
花純は熱心に臼井の説明に耳を傾けている。
「では早速やってみましょうか。森川さん、好きな形のクッキーを選んでください」
「はい。じゃあ、このお星さまにします」
「かしこまりました。まずはこのコルネを絞りながら、全体的にクリームを塗ってください。そのあと、こちらのコルネで好きな模様を描きます」
言われた通りに花純はクッキーを色づけていく。
「うん、いいですね。ぷくっと膨らむくらいたっぷり載せていいですよ」
「あ! クッキーがちょっと割れちゃった」
「大丈夫ですよ。アイシングクリームを接着剤みたいにすれば、ほら! くっつきました。その上からまた塗ってください」
「ほんとだ。失敗知らずでいいですね」
臼井と花純は、もう顔をくっつけんばかりの近さだった。
「このラインを、たとえば爪楊枝でひっかくようにすると綺麗な模様になりますよ。ラテアートみたいに。ほら」
「すごい! え、結構簡単に出来るんですね」
「でしょ? うん、森川さんのも上手です」
「ふふ、すごく楽しいです」
「じゃあ、レース模様にも挑戦してみますか? 例えばこんなふうに、点をたくさん並べてから半円で結んで……」
「なんて芸術的!」
花純は夢中で次々と模様を描いていく。
途中でふと顔を上げ、臼井の手元を見て声を上げた。
「う、臼井さん! 指輪にクリーム塗ってます?」
「ははは! これはフラワーネールという土台ですよ。ここにバラ口金でアイシングを花びらみたいに絞るんです。何枚も重ねると、ほら」
「わあ、バラのお花!」
花純はこぼれ落ちそうなほど目を見開き、両手で口元を覆って感激している。
「なんて素敵なの。臼井さん、もう魔法使いみたい」
「ははっ、そんなに喜んでいただけると……」
そこまで言うと、臼井は一気に青ざめた。
鋭い視線を向ける光星とバッチリ目が合っている。
「あ、で、では、お食事の準備をいたしますね。失礼します」
臼井は逃げるようにそそくさと去って行った。



