その日はいつにも増して手際良く仕事を片付けていく。
夕方になると、何度も時計を確認しながらはやる気持ちを抑えていた。
18時過ぎに、コンコンと社長室のドアがノックされて臼井の声がした。
「社長。シリウストラベルの森川様をお連れしました」
「どうぞ」
平静を装って返事をし、ネクタイを整えて立ち上がる。
「失礼いたします」
お辞儀をして入って来た花純は、今朝と同じオフホワイトのブラウスに水色のフレアスカート姿だったが、朝は下ろしていた髪をヘアクリップでアップにまとめていた。
それだけで光星の胸はドキッと跳ねる。
「仕事終わりに申し訳ない。どうぞ座って」
「はい、失礼します」
ソファに向かい合って座ると、臼井が紅茶を運んできた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
二人が視線を合わせて微笑んだだけで、気持ちが乱される。
こんなことでどうする、と光星は心を落ち着かせた。
「早速なんだけど、実際のサイトを見ながら話してもいいかな?」
「はい」
ローテーブルにパソコンを置くと、画面を花純の方に向ける。
「今回リニューアルを考えているのは、バージョンアップと新機能についてなんだ。より使いやすく、より楽しめるサイトにしていきたい。率直に改善点や要望などを教えてもらえるかな? 実際の使い心地とか」
花純は、そうですね、と少し考えてから口を開いた。
「あくまで私の感想ですが、このサイトは機械に疎い私でも使いやすいです。シンプルで操作も簡単で。ですがある程度慣れてくると、もっとこうしたいなって欲が出て来ます。例えば、投稿する写真をフレームやスタンプで飾ったり、コラージュしてから投稿出来たらいいのにって」
そう言って花純は自分のスマートフォンを取り出し、アプリを立ち上げる。
「これは私がよく使っているアルバムのアプリなんですが、ここで写真をデコレーションしてからSNSにアップすることもあります。SNSのサイトにこういう機能があれば、わざわざ別のアプリを立ち上げなくてもいいし、もっと簡単にこのサイトを楽しめると思います」
「なるほど」
花純が実際に写真を飾って見せ、光星は身を乗り出してその手元を覗き込んだ。
「へえ、こんなに簡単にすぐ出来るんだ。4枚の写真を1つにまとめたり」
「ええ。最初は使い方が分からず、この魔法のステッキみたいなボタンしか使ってませんでした。これを押せば、自動で色んな加工をしてくれるんです。たとえば、写真を何枚か選択してこのステッキを押せば……。ほら! 1枚のアルバムみたいにしてくれます」
「うん、センスもいいな。女子が好きそうだ」
「そこから、じゃあこの写真はこの位置で、もっと大きくして、という感じで微調整出来ます。このアプリ、私は使いやすくて好きなんですが、人気がないのか案外知られていないようで」
「ああ。うちでも他社のアプリやサイトはチェックしているけど、これは知らなかったな」
光星はよく見ようと花純の方に身を乗り出す。
「あの、社長。よろしければそちらに移動しても?」
「え? ああ、どうぞ」
「はい、失礼します」
花純は立ち上がると、光星の隣に来て座った。
ふわりと髪から良い香りがして、光星はドキッとする。
「アプリの名前はこちらです。使える機能は、スタンプとフレームとコラージュとペイント。無料のスタンプとフレームはこんな感じで、好みに合わせて100円で有料のものも買えます。文字入力や色彩の調整も出来ますが、いわゆる消しゴムマジックとか高度なものが出来ないのが、イマイチ人気がない理由かもしれません」
「確かに。だけどうちのサイトもそこまで高度な技術を取り入れると、コストの面でも容量の面でも現実的ではないな。これくらいがちょうどいいかもしれない。参考にさせてもらってもいいかな?」
「もちろんです」
夕方になると、何度も時計を確認しながらはやる気持ちを抑えていた。
18時過ぎに、コンコンと社長室のドアがノックされて臼井の声がした。
「社長。シリウストラベルの森川様をお連れしました」
「どうぞ」
平静を装って返事をし、ネクタイを整えて立ち上がる。
「失礼いたします」
お辞儀をして入って来た花純は、今朝と同じオフホワイトのブラウスに水色のフレアスカート姿だったが、朝は下ろしていた髪をヘアクリップでアップにまとめていた。
それだけで光星の胸はドキッと跳ねる。
「仕事終わりに申し訳ない。どうぞ座って」
「はい、失礼します」
ソファに向かい合って座ると、臼井が紅茶を運んできた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
二人が視線を合わせて微笑んだだけで、気持ちが乱される。
こんなことでどうする、と光星は心を落ち着かせた。
「早速なんだけど、実際のサイトを見ながら話してもいいかな?」
「はい」
ローテーブルにパソコンを置くと、画面を花純の方に向ける。
「今回リニューアルを考えているのは、バージョンアップと新機能についてなんだ。より使いやすく、より楽しめるサイトにしていきたい。率直に改善点や要望などを教えてもらえるかな? 実際の使い心地とか」
花純は、そうですね、と少し考えてから口を開いた。
「あくまで私の感想ですが、このサイトは機械に疎い私でも使いやすいです。シンプルで操作も簡単で。ですがある程度慣れてくると、もっとこうしたいなって欲が出て来ます。例えば、投稿する写真をフレームやスタンプで飾ったり、コラージュしてから投稿出来たらいいのにって」
そう言って花純は自分のスマートフォンを取り出し、アプリを立ち上げる。
「これは私がよく使っているアルバムのアプリなんですが、ここで写真をデコレーションしてからSNSにアップすることもあります。SNSのサイトにこういう機能があれば、わざわざ別のアプリを立ち上げなくてもいいし、もっと簡単にこのサイトを楽しめると思います」
「なるほど」
花純が実際に写真を飾って見せ、光星は身を乗り出してその手元を覗き込んだ。
「へえ、こんなに簡単にすぐ出来るんだ。4枚の写真を1つにまとめたり」
「ええ。最初は使い方が分からず、この魔法のステッキみたいなボタンしか使ってませんでした。これを押せば、自動で色んな加工をしてくれるんです。たとえば、写真を何枚か選択してこのステッキを押せば……。ほら! 1枚のアルバムみたいにしてくれます」
「うん、センスもいいな。女子が好きそうだ」
「そこから、じゃあこの写真はこの位置で、もっと大きくして、という感じで微調整出来ます。このアプリ、私は使いやすくて好きなんですが、人気がないのか案外知られていないようで」
「ああ。うちでも他社のアプリやサイトはチェックしているけど、これは知らなかったな」
光星はよく見ようと花純の方に身を乗り出す。
「あの、社長。よろしければそちらに移動しても?」
「え? ああ、どうぞ」
「はい、失礼します」
花純は立ち上がると、光星の隣に来て座った。
ふわりと髪から良い香りがして、光星はドキッとする。
「アプリの名前はこちらです。使える機能は、スタンプとフレームとコラージュとペイント。無料のスタンプとフレームはこんな感じで、好みに合わせて100円で有料のものも買えます。文字入力や色彩の調整も出来ますが、いわゆる消しゴムマジックとか高度なものが出来ないのが、イマイチ人気がない理由かもしれません」
「確かに。だけどうちのサイトもそこまで高度な技術を取り入れると、コストの面でも容量の面でも現実的ではないな。これくらいがちょうどいいかもしれない。参考にさせてもらってもいいかな?」
「もちろんです」



