「お疲れ様」
ビールで乾杯すると、滝沢はゴクゴクと一気に半分ほどグラスを空ける。
「はあー、うまっ」
「ふふっ、今日も暑いし、疲れた時のビールは沁みるよね」
「うん、もうシミシミ」
「あはは!」
おつまみを食べながら、滝沢が身を乗り出した。
「で? さっきの続きは?」
「えーっと、どこからだっけ?」
「卒論書いてから就活始めたってとこ」
「あ、そうか。その前にね、大学3年生の秋に、急に思い立って海外の大学に編入したの」
「ええ!? なんでまた?」
「上手く言えないけど、滝沢くんの言う、妙な反抗心もあったと思う。型にはまりたくないっていう」
ふーん、と滝沢は何やら考え込む。
「森川さんって、見た目と違うんだね。なんか風紀委員みたいに、ちゃんとルールとか守ってそうなのに。『どうしてもこうしてもない、ルールはルールです!』って」
「あー、よく言われる。でも考え方は割りと男性っぽいのかな?」
「うん、そうかも。それで?」
続きを催促するように、滝沢はまた身を乗り出してきた。
「それで、アメリカの大学の単位を日本の大学に移行して、残りは卒論だけになった時に帰国したの。もう完全に就活の波には乗り遅れてるでしょ? だから正社員は諦めて、みんなより少し早く2月から契約社員として働き始めたの。そしたらありがたいことに仕事ぶりを評価されて、4月から新入社員と同じ、正社員にしてくれたのよ。で、今に至るってわけ」
「そうなんだ、そういうこともあるのか。俺、就活遅れただけで、人生踏み外した気がしてた」
「全然そんなことないよ! だったら私なんて、今頃草むらの中で生きてることになるよ?」
「ぶはっ! だから、ビール飲んでる時に笑かすなって」
滝沢は楽しそうに笑ってから、しみじみと呟く。
「良かった、森川さんの話聞けて。すげえ救われた」
「ほんと? 私の変な経験が誰かの役に立つなんて嬉しい」
「うん、めちゃくちゃ気持ちが楽になった。なんか、俺の存在を肯定された感じ」
「そっか。無理に周りと合わせたり、考え方を変えたりしなくていいよ。滝沢くんはそのままで充分、素敵な人生を歩める人だと私は思う」
「森川さん……」
しんみりする滝沢に、今日は飲みな!と花純はビールを勧めた。
ビールで乾杯すると、滝沢はゴクゴクと一気に半分ほどグラスを空ける。
「はあー、うまっ」
「ふふっ、今日も暑いし、疲れた時のビールは沁みるよね」
「うん、もうシミシミ」
「あはは!」
おつまみを食べながら、滝沢が身を乗り出した。
「で? さっきの続きは?」
「えーっと、どこからだっけ?」
「卒論書いてから就活始めたってとこ」
「あ、そうか。その前にね、大学3年生の秋に、急に思い立って海外の大学に編入したの」
「ええ!? なんでまた?」
「上手く言えないけど、滝沢くんの言う、妙な反抗心もあったと思う。型にはまりたくないっていう」
ふーん、と滝沢は何やら考え込む。
「森川さんって、見た目と違うんだね。なんか風紀委員みたいに、ちゃんとルールとか守ってそうなのに。『どうしてもこうしてもない、ルールはルールです!』って」
「あー、よく言われる。でも考え方は割りと男性っぽいのかな?」
「うん、そうかも。それで?」
続きを催促するように、滝沢はまた身を乗り出してきた。
「それで、アメリカの大学の単位を日本の大学に移行して、残りは卒論だけになった時に帰国したの。もう完全に就活の波には乗り遅れてるでしょ? だから正社員は諦めて、みんなより少し早く2月から契約社員として働き始めたの。そしたらありがたいことに仕事ぶりを評価されて、4月から新入社員と同じ、正社員にしてくれたのよ。で、今に至るってわけ」
「そうなんだ、そういうこともあるのか。俺、就活遅れただけで、人生踏み外した気がしてた」
「全然そんなことないよ! だったら私なんて、今頃草むらの中で生きてることになるよ?」
「ぶはっ! だから、ビール飲んでる時に笑かすなって」
滝沢は楽しそうに笑ってから、しみじみと呟く。
「良かった、森川さんの話聞けて。すげえ救われた」
「ほんと? 私の変な経験が誰かの役に立つなんて嬉しい」
「うん、めちゃくちゃ気持ちが楽になった。なんか、俺の存在を肯定された感じ」
「そっか。無理に周りと合わせたり、考え方を変えたりしなくていいよ。滝沢くんはそのままで充分、素敵な人生を歩める人だと私は思う」
「森川さん……」
しんみりする滝沢に、今日は飲みな!と花純はビールを勧めた。



