9時45分になると、花純は千鶴や原と一緒に会議室の準備に向かった。
「この部屋も初めて使うね。家具の真新しい匂いがする」
深呼吸する千鶴の横で、花純は資料をテーブルに並べた。
その時コンコンとドアがノックされ、パソコンとプロジェクターを立ち上げていた原が「はーい」と返事をする。
「原くん、いいよ。私が出るね」
花純がドアを開けると、先ほどの滝沢が大きな紙袋を両手に持っていた。
「カフェ ルクスです。コーヒーをお持ちしました」
「ありがとうございます」
紙袋を受け取ろうとすると、滝沢は「いえいえ」と首を振る。
「自分が並べますから」
「そうなの? ありがとう。私もお手伝いします」
二人でコの字に並んだテーブルにひとつずつコーヒーカップを置いていく。
砂糖とミルクを載せた小皿も、カップの間に並べた。
「会議が終わりましたら片付けに伺いますので、ご連絡ください」
「分かりました。12時くらいになると思います」
「承知しました。それでは」
ぺこりと勢い良くお辞儀をしてから部屋を出て行った滝沢に、千鶴がニヤリとする。
「へえ。なーんかお姉さんごころをくすぐる若者ね」
「千鶴ちゃんたら、そんな」
「バイトくんよね? 大学生かな、フリーター?」
「どうだろうね」
すると原がやれやれとため息をつく。
「千鶴、手出すなよ? まだ若い青年が女嫌いになったらどうする」
「取って食うみたいな言い方しないでよ。28歳になってみて初めて気づいたの、ハタチそこそこの男の子の魅力に。いいわー、大人になりかけの揺れる年頃って感じ」
「おい、マジで狙うのか?」
「別にいいでしょ? 私、今フリーなんだし」
「向こうはきっと同年代の彼女がいるんじゃないか?」
「そんなの聞いてみないと分かんないもん」
まあまあと、花純は二人を取り成した。
「ほら、もうすぐ会議始まるよ」
「ヤベッ。花純、スクリーンチェックしてくれ」
「うん」
準備が整うと、ちょうど部長と課長がやって来た。
花純はドアを開けて出迎える。
「おっ、コーヒー頼んでくれたんだね。いい香りだな」
「はい。ここのカフェは、味もいいですよ」
「ありがとう、森川さん。なんか会議がちょっと楽しくなるよ」
「ふふ、そうですね」
次々とやって来る支店長たちも、入るなり「いい香りがする」と笑顔を浮かべる。
コーヒーを飲みながら、会議は和やかに終了した。
「この部屋も初めて使うね。家具の真新しい匂いがする」
深呼吸する千鶴の横で、花純は資料をテーブルに並べた。
その時コンコンとドアがノックされ、パソコンとプロジェクターを立ち上げていた原が「はーい」と返事をする。
「原くん、いいよ。私が出るね」
花純がドアを開けると、先ほどの滝沢が大きな紙袋を両手に持っていた。
「カフェ ルクスです。コーヒーをお持ちしました」
「ありがとうございます」
紙袋を受け取ろうとすると、滝沢は「いえいえ」と首を振る。
「自分が並べますから」
「そうなの? ありがとう。私もお手伝いします」
二人でコの字に並んだテーブルにひとつずつコーヒーカップを置いていく。
砂糖とミルクを載せた小皿も、カップの間に並べた。
「会議が終わりましたら片付けに伺いますので、ご連絡ください」
「分かりました。12時くらいになると思います」
「承知しました。それでは」
ぺこりと勢い良くお辞儀をしてから部屋を出て行った滝沢に、千鶴がニヤリとする。
「へえ。なーんかお姉さんごころをくすぐる若者ね」
「千鶴ちゃんたら、そんな」
「バイトくんよね? 大学生かな、フリーター?」
「どうだろうね」
すると原がやれやれとため息をつく。
「千鶴、手出すなよ? まだ若い青年が女嫌いになったらどうする」
「取って食うみたいな言い方しないでよ。28歳になってみて初めて気づいたの、ハタチそこそこの男の子の魅力に。いいわー、大人になりかけの揺れる年頃って感じ」
「おい、マジで狙うのか?」
「別にいいでしょ? 私、今フリーなんだし」
「向こうはきっと同年代の彼女がいるんじゃないか?」
「そんなの聞いてみないと分かんないもん」
まあまあと、花純は二人を取り成した。
「ほら、もうすぐ会議始まるよ」
「ヤベッ。花純、スクリーンチェックしてくれ」
「うん」
準備が整うと、ちょうど部長と課長がやって来た。
花純はドアを開けて出迎える。
「おっ、コーヒー頼んでくれたんだね。いい香りだな」
「はい。ここのカフェは、味もいいですよ」
「ありがとう、森川さん。なんか会議がちょっと楽しくなるよ」
「ふふ、そうですね」
次々とやって来る支店長たちも、入るなり「いい香りがする」と笑顔を浮かべる。
コーヒーを飲みながら、会議は和やかに終了した。



