本当の愛を知るまでは

翌朝。
アラームの音で目を覚ました花純は、スマートフォンに手を伸ばす。
と、アラームを止めた途端、電話がかかってきた。

「わっ、びっくりした。電話? 光星さんだ!」

急いで電話に出る。

「もしもし、光星さん?」
『花純、おはよう。ちょうど起きる頃だと思って』
「今起きました。光星さんは、無事に着きましたか?」
『ああ、着いたよ。こっちは昼過ぎだけど、時差ボケで眠い。花純は? よく眠れた?』
「うーん、ちょっと寝不足です。一人で寝るのは久しぶりで……」

すると電話の向こうで光星が声のトーンを下げた。

『ひょっとして、寂しかった?』
「……はい」

小さく返事をすると、光星は無言になる。

「えっと、光星さん?」
『ごめん、嬉しくてニヤけて……』
「え?」
『花純が俺のこと、そんなふうに思ってくれるのが嬉しい。って、ごめん。寂しがらせてるのに』

改めてそう言われ、花純も気恥ずかしさに言葉に詰まった。

『花純、早く会いたい』
「私もです」

その時、遠くから『コウセイ!』とアンドリューの声がした。

「アンドリューが呼んでますね。もう切ならきなゃ」
『そうだな。花純も仕事、気をつけて行っておいで。また連絡する』
「はい、光星さんもお仕事がんばってください」
『ありがとう。それじゃあ』

通話を終えると、花純は嬉しさと寂しさが入り混じったような気分でスマートフォンを胸に当てる。
遠く離れているのは寂しいけれど、光星の優しさを感じて心が温かくなった。

「やっぱり好き。光星さんが大好き」

ポツリと呟くと、笑顔でベッドを降りた。