だけど、その中で伊織だけがずっと無口だ。
「(いや、伊織はなんでか、いつもほとんどみんなの会話には入らないんだよね)」
理由は分からない。
大和と陽太がバカ騒ぎしているときも、伊織だけは常に少し離れたところから、ただ私のことを見守ってくれている。
少し前に、伊織が言っていたあの言葉。
『小さいころからずっと、君を守るように言われてきた』
『うん。だから、俺は別に美桜ちゃんとの結婚は望まない。でも、君を一番に守る権利はほしい』
『それが、俺の使命だって思うから』
あの言葉が、ずっと引っかかっている。
正直、伊織達が私のことを近くで守ってくれることで、すごく安心できるし、本当にありがたいと思っている。
だけど、時々考えてしまう。
いくらおじいちゃんから言われた命令だったとしても、本当は嫌なんじゃないかって。
だって、大和も伊織も私と一歳しか歳が変わらない、普通の男子だ。
陽太にいたっては、私と同じ中学一年生になったばかり。
例えば、本当は入りたい部活があったんじゃないか、とか。
例えば、もっと自由な時間がほしいんじゃないか、とか。
最近は特に、伊織に対してそんなことを思ってしまう。



