そして、美桜が中学に上がったタイミングで初めてアイツと対面したとき。
『私はゼッタイに、結婚なんてしないんだから!』
そんな強い口調に、俺の中の闘争心が湧き立った。
「……ならぜってぇ、俺のモンにしてやるよ」
最初は大安寺のジィさんの命令で、仕方なく美桜の護衛をしてきた。
でも今は、本当にそうだろうか。
あいつが俺のケンカを間近で見て、恐怖でいっぱいの顔をしたとき、心臓が止まるかと思うほど驚いた。
あんな姿、見せるんじゃなかったと後悔もした。
「……伊織、私を守ってくれてありがとう」
だが、俺の右手を包み込んでそう言った美桜に、俺は柄にもなく緊張した。
そういえば、ふと、母さんが生きているころによく言っていた言葉を思い出した。
『いつか、大和に好きな女の子ができたら、そんな荒っぽい口調じゃダメよ?』
『俺、好きな女なんかいねぇし!』
『〝いつか〟の話をしているの!……いい?もしも大和が大事にしたいと思える女の子に出会ったら、うんと優しくしてあげるのよ?』
『でも俺、そういうの苦手だし』
『大和は強いんだから、その分守ってあげるの。困っていたら助けてあげるの』
『母さんなら守ってやるけど、他の人は嫌だね!お断りだ!』
『ふふっ。いつか、母さんよりも大事な女の子に、大和なら出会えるはずよ──』



