「うわ、大和ってば失礼な言い方〜!僕、あの子のこと見てたら可哀想になっちゃうよ」
「……友達ができないんだよ」
「なんで友達ができねぇんだよ。性格がめちゃくちゃ悪い、とか?」
ふっ、と鼻で笑うようにそう言うと、伊織は鋭い目つきで俺をにらむ。
「大安寺っていう名前だけで、ある程度の人は怖がるでしょ。美桜ちゃんは必死で友達を作ろうとしてるけど、周りがそれを許さないんだ」
「……へぇ」
可哀想なやつ、だと思った。
でも、毎日のように美桜を守る任務をこなしていると、いろんなことが見えてきた。
ある日を境に、美桜が一切笑わなくなったこと。
同じ学年のやつらから、変なウワサを立てられ、『目つきの悪い悪女』と言われていること。
昼休みになると、暑くても寒くても一人で校舎の中をうろつくこと。
たまに、保健室のベッドでサボっていること。
俺は弱いやつが嫌いだ。
でも、美桜は弱くなんかなかった。
どれだけ周りから遠ざけられ、恐れられ、孤独だったとしても、決して弱音を吐いたりしない。
小さくて、か弱そうに見えても、美桜はずっと強いやつだった。



