結婚なんて、ゼッタイお断り!








《いいか。お前達三人には、これからワシの孫娘、大安寺 美桜を守ってもらう》

《もちろん、ただ守れと言うわけじゃない》

《美桜の婚約者に選ばれた者には──……》





その命令を聞いたとき、冗談じゃねぇと思った。

伊織は何も言わず、ただ大安寺のジィさんの命令に従うことを決めた。

陽太は飛び跳ねて喜んで、自分が絶対に結婚するんだとはしゃいでいた。





俺はあんなガキを守るために、これまで強くなってきたんじゃない。

この大きな組織のトップに君臨するためだ。

「(チッ、でも仕方ねぇ……か)」





当時、美桜を守るのは大安寺のジィさんの命令があるから仕方なく……と思っていた。

あいつが中学に進学するまで、俺らが接近することは禁じられていたから、いつも遠くの方から美桜の行く先々を見守り、ときには邪魔者を排除し、安全を守った。





ただ、大安寺 美桜という女は、いつも一人だった。

放課後に誰かと遊ぶわけでもない、休みの日にどこかへ出かけることもしない。

毎日同じ時間に、同じように、学校と家を往復するだけの日々。







「あの大安寺 美桜って女はさ、友達とかいねぇの?」

日々の任務の最中、ずっと疑問に思っていたことを伊織達に尋ねた。