「いいか、大地。今日からお前は、美桜ちゃん……いや、大安寺の嬢ちゃんを守ってやるんだ」
「はぁ!?俺が!?」
「そうだ。あとから組長から直々に命令が下るはずだ」
「……チッ。なんで俺があんな弱っちい女なんかを」
親父からそんな話を聞かされたとき、俺は腹が立っていた。
なんであんなにも小さくてか弱い女が、この大安寺組にいるんだよ、と。
ここは強いやつしかいられない世界だ。
それなのに、あんな弱っちいやつがいるから、大安寺の人間が敵組に誘拐された、だなんてダセェことになるんじゃねぇか。
「……あんなの、ただの俺らの〝弱点〟じゃねぇかよ」
俺は美桜のことがずっと気に入らなかった。
組長の孫というだけでなんの力も持たないくせに、大安寺の中心で堂々と生活していることも。
守られるだけの存在が大安寺組にいるということも。
伊織は美桜のことをもっと前から任されていたらしいが、あの誘拐事件以降、なんだか人が変わったようになってしまった。
そして、美桜の誘拐事件の翌日。
俺と伊織と陽太の三人だけに与えられた【とある命令】が正式に下された。



