大和は右手でヒョイヒョイッとジェスチャーして、私を部屋の外へ呼ぶ。
私は大和に連れられるまま、家を出た。
外に出ると、空はすっかり太陽が傾いていて、夕日がきれいに映し出されている。
そういえば、今日はじめてちゃんと家の外へ出た。
新鮮な空気をスゥッと体中にたくさん吸い込むと、少しだけ心が軽くなる。
「ちょっと歩くけど、いいか?」
「うん、私は大丈夫。でも、どこに行くの?」
「それは到着してからのお楽しみだな」
「え!?あ、危ないところとかヤバいところに連れていくんじゃないでしょうね!」
「なんでだよ」
ふっ、と鼻で笑った大和は、なんだかいつも以上に大人しい。
もしかしたら、私が大和のことを怖がっていたことを、まだ気にしているのかもしれない。
「(あのとき、大和のこと怖いって思っちゃったのは確かだけど……)」
でも、今はそんなこと思わない。
大和が誰よりも私を助けてくれて、守ろうとしてくれていたことを知っているから。
今日、ちゃんと話せたらいいな。
そんなことを思いながら、私は大和と二人で川沿いの道を歩いた。
二人とも、会話はしなかった。
だけど不思議と、そんな無言が苦じゃない。



