一発大きなゲンコツをお見舞いしてやろうと、手を振り翳したそのとき。
──バタンッ!
私の部屋の扉が勢いよく開かれた。
「──陽太、離れろ」
そして、地を這うような低い声が耳に伝わる。
「や、大和!」
学校から帰ってきたばかりなのか、大和は制服姿のまま私の部屋にズカズカと入ってきて、私にピッタリくっついていた陽太を強引に引き離した。
「あー、もう!やめてよ大和ぉ!」
「お前なぁ、いい加減にしろよ。まだ風邪引いてんだろ?黙って自分の部屋で寝やがれ」
「えー!だって一人は寂しいんだもん!美桜ちゃんがいてくれないと風邪治んないしー」
「うるさい、寝ろ」
大和は容赦なく陽太を部屋から放り出した。
陽太が途端に部屋からいなくなって、大和と二人だけの空間が訪れた。
さっきまでの騒がしさがウソみたいに、今はシンと静まり返っている。
「(そういえば、大和とはちょっと気まずいままだったんだ)」
「──美桜、ちょっと今いいか?」
「へ!?あ、うん……」



