こうして僕は、大安寺組の家族の一員として今日まで育ててもらった。

お大安寺のおじいちゃんや美桜ちゃんが住んでいる場所とはまた別の家で、僕達は生活を共にするようになったんだ。




あれ以来、一人でご飯を食べることは一度もない。

たくさんケンカもしたけど、僕の周りには伊織や大和、それから大安寺の家族が常に一緒にいてくれた。





だけど、本当の僕の姿を見せるのは僕の家族だけ。

外ではみんなが大好きな僕を、今でも演じている。



本当の僕を知る人は、僕が大事に思っている人達だけでいい。

そう、思っていた。





なのに、君が──……美桜ちゃんが言ってくれたさっきのあの一言。




『そんなの、陽太じゃないじゃん』

『じゃあ私が、もっとかっこいい陽太になってって言ったら、陽太は今の自分を変えるの?』

『それじゃあただの私の〝好き〟に合わせただけ陽太の陽太だよ。本当の陽太はどうなっちゃうの?』

『私は本当の陽太が見てみたいし、ありのままの陽太でいてほしいって思うよ?』






僕、まさか美桜ちゃんにまで見抜かれるとは思ってなったんだ。


僕のお姫様は、やっぱりすごい人だった。

僕達が守ってきた、大安寺美桜というお姫様──。





「早く僕のお嫁さんになってよ。美桜ちゃん」

今日、僕は心の底から君を好きだって思ったよ。

どんな手を使ってでも、君を僕のものにしたい。

そんな感情をしまい込んで、僕はニッコリと得意の笑顔で君を見た。