だけど、それでも僕は母が好きだった。
ずっと一緒にいたいと思っていた。
だからセンスのないダサい服をもらっても、喜んで着て幼稚舎に通っていた。
お母さんが『かわいいね』と言ってくれればそれでよかったんだ。
でも、そんな母は僕の元からいなくなった。
お手伝いさんに僕を預けて、日本を離れた。
両親が帰ってこなくなって、僕はどんどん笑顔になれなくて、落ち込んでいく一方だった。
だから小学校へ入学してからも、いじめや誹謗中傷がなくなることはなかった。
そんな僕は、自分を守るために徹底的に変えることにした。
ふっくらした僕が嫌いなら、痩せてあげるよ。
もっとニコニコした性格の僕がいいなら、そうしてあげる。
暗くて、弱くて、泣き虫な僕を押さえつけて、閉じ込めてしまえばいいんだ。
そんなふうに〝みんなが望む僕〟になっていったら、周りはだんだんと僕のことをいじめなくなった。
むしろ相手から積極的に話しかけてくれるようになった。
「みんな、おはよー!」
「あ、陽太くんおはよう!」
「陽太、昨日のカードゲームの続きしようぜ!」
「うん、もちろん!今日も僕が勝っちゃうけどね〜!」
「何言ってんだよ!次、勝つのは俺だし!」



