陽太の雰囲気が、これまでと違って見える。
いつもとまるで別人の陽太に、私の心臓は不覚にもドキドキしてしまっていた。
「(こんなの、私の知ってる陽太じゃない)」
「ねぇ、ほら。言ってみてよ」
「それは、その、いつも笑っていて、みんなと友達で……」
陽太のいいところが、うまく言葉にできない。
でも、私は陽太のいいところをたくさん知っている。
可愛いだけじゃない、陽太のもっと深い部分の……優しさを。
たとえば同じクラスの生徒が太陽の日差しで眩しそうにしていたら、さりげなくカーテンを閉めてあげているところだったり。
理科の実験結果の発表をグループになって行うとき、前に出てしゃべることが苦手な生徒の代わりに原稿を読んであげたり。
陽太は甘えん坊で、くっつき虫で、自分の意見がはっきりしている性格の男の子だけど、本当に優しい心の持ち主だってことを、私はこの一ヶ月間の間で知っていった。
「……あぁ、そういえば美桜ちゃんは可愛い系の男の子のほうが好きなんだっけ?」
だけど、今の陽太にそんな優しさは微塵も感じられない。
むしろ、何かに怒りを抱いているようにさえ思う。
「陽太、いきなりどうしたの?」
「美桜ちゃんが好きな僕を選んでよ。いつものワンコ系の可愛い僕が好き?」
「だから、陽太。話を聞いて……」
「それとももう少しかっこい系が好き?美桜ちゃんのタイプに合わせてあげられるよ?ほら言ってよ、君はどんな僕が好きなの?」
私の話を聞こうとしないで、陽太は一方的に話を進めていく。
私の好みに合わせて自分を変えていくだなんて、そんなの──。



