二人の鼻と鼻がくっ付いていしまうくらいの近距離。
目の前にいる陽太は、いつものかわいい男の子の顔じゃなかった。
たまに顔をのぞかせる、意地悪なほうの表情になっていた。
「よ、陽太?もうすぐ伊織や大和も帰ってくるころだし、早く退けて?ね?」
「えー?だって僕のとなりで眠ってた美桜ちゃんがいけないんだもん」
「ちょっと寝てただけじゃん!いけないことないでしょ!?」
「──ねぇ、美桜ちゃん。僕だってれっきとした男の子なんだよ?」
「え?」
陽太に押さえつけられている手に、キュッと力がこめられた。
まっすぐに私を見つめる陽太のその視線から、逃げられない。
「美桜ちゃん忘れてるみたいだけど、僕だって君の婚約者候補なんだよ?知ってる?」
「知ってる、よ」
「うそだ。僕のことなんて、ただの子犬みたいな可愛い男……くらいにしか思ってないでしょ?」
「そんなこと、ないよ」
「へぇ。じゃあ僕のこと、どんなふうに思ってるか教えてよ」



