「……伊織?どうかした?」
「美桜ちゃんが陽太のそばにいたいって言うなら、止めはしないけど……」
「うん?」
「でも気をつけて。陽太はただの〝かわいい男子〟なんかじゃないから」
「それってどういう……」
「何かあったら俺を呼んで、いいね?」
「えっと……うん」
……ただのかわいい男子なんかじゃない?
伊織のその言葉の意味をよく理解しないまま、私はとりあえず頷いた。
「──陽太、起きてるよね?」
「……」
「美桜ちゃんに何かしたら、許さないからね」
寝ているはずの陽太にそんな言葉を置いて、伊織は私の部屋を出ていった。
途端にシンと静まり返るこの空間。
私はとりあえず朝の身支度をしようと立ち上がった。
「……ふふっ!」
そのとき、布団の中から陽太の笑い声が聞こえた。
「陽太?アンタ、起きてるの?」
「アッハハ!だってさっきの伊織の言葉、聞いてたでしょ!あまりにおかしくって!」
「おかしいって、何がよ」
「美桜ちゃんを必死に守ろうとしてたじゃん」
「私を守る?いったい、何から?」
「──僕から、だよ」
「はぁ?意味わかんない!」



