慣れた手つきで陽太の様子を伺う伊織。
……伊織は陽太達のことをライバルだっていうけど、小さいときも、こうして伊織の看病をしてあげていたのかな。
ゆっくりと寝返りを打った陽太は、すごく苦しそうな表情を浮かべていた。
「私、今日は一日陽太の看病するよ」
「え?でも美桜ちゃん、学校は?」
「この様子だと、相当しんどいだろうし。私は一日くらい休んだって平気」
「陽太は多分、別に一人でも大丈夫だと……」
「風邪引いたときって、心細いんだよね。私が昔、そうだったから」
小さいころの私も、よく熱を出す子供だった。
体の節々が痛くて、苦しくて、すごくしんどかった。
だけど、おじいちゃんや大安寺の家族がみんなで看病してくれた。
ご飯を食べさせてくれたり、お水を飲ませてくれたり、熱を測ってくれたり。
「誰か一人でもそばにいてくれると、それだけで心強かったんだ」
「……」
「だから、伊織は学校に行って?私が陽太のそばにいてあげるから」
陽太にベッドをゆずって、布団をかけてあげる。
あとで熱を測って、何が食べられそうか聞いて、陽太がリクエスとするものを作ってあげよう。
バタバタと忙しくする私のとなりで、伊織はなぜか不安そうな顔を浮かべていた。



