大和が私を傷つけるはずない。
むしろ、守ってくれたじゃない。
それは分かっている。
ちゃんと頭では理解している。
だけど、真っ直ぐに伸びてくる大和の傷だらけの手。
赤く腫れたそれを見て、思わず体をビクッとはねさせてしまった。
大和はそんな私を、見逃さなかった。
その手は私の目の前で止まって、大和はそっと引き下げた。
「……すまねぇ。怖がらせたよな」
「……っ」
「俺は先に帰るから、お前は伊織と陽太と一緒にいろ」
「あ、待って……」
私の呼びかけも虚しく、大和は一人でこの場を去っていく。
あたりはいつの間にか人が一人もいなくなっていて、少し前の騒ぎが嘘みたいに静かになっていた。
「とにかく、一度家に戻ろうか」
「……」
「美桜ちゃん、歩ける?」
「あ、うん……」
伊織に支えてもらいながら、ゆっくりと家に向かって歩いていく。
陽太は黙ったまま、私のカバンを持ってくれた。



