結婚なんて、ゼッタイお断り!







「大丈夫、俺に任せて」

「でもっ」

「ちょっとの間だけ、ここにいてね。すぐ戻ってくるから」



最後に伊織はそう言って、ギュッと私を強く抱きしめてくれた。

そして、私の頭をポンポンとなでて、そっと離れる。



伊織のぬくもりに、 なぜだかすごく安心できた。

優しい声色に、落ち着きを取り戻せた。




「ありがと、伊織……」

誰にも聞こえない声で、感謝の言葉を伝えた。





「──大和、陽太。そこまでだよ」

「うるせぇ伊織!こいつらは美桜を羽交い締めにしやがったんだぞ!」

「そうだそうだ!僕と美桜ちゃんのデートを邪魔したんだから!もっとお仕置きしないと!」

「やめろって、言ってんの。美桜ちゃんが怖がってるだろ」




伊織が私の名前を出した途端、大和はハッと我に返るようにこちらを見た。

そして、大和の目が大きく見開いていく。

驚いた表情の大和は、次第にその顔を曇らせていった。






「美桜、違う。これは、ただ、お前のことを守りたくて……」


そこに、いつもの強気な大和はいない。

何か言葉を漏らしながら、一歩、また一歩と私の元へ近づいてくる。