大和が大暴れしている姿を見て、急に体中の力が入らなくなった。
「(まずい、このままじゃ……私、倒れちゃう)」
……誰か、助けて。
助けを呼ぼうとしても、のどが張り付いたみたいになって声は出ない。
体が少しずつ地面に向かって傾いていく。
もうダメだ、倒れちゃう──!
そう覚悟した瞬間だった。
「――もう大丈夫。怖くない」
「……伊織?」
「しっかり息を吸って。大丈夫だよ、美桜ちゃん」
伊織の優しい声が、切羽詰まっていた私の中に溶け込んでくる。
そして、倒れかけていた体をふわりと支えてくれた。
「伊織……っ、伊織!」
「俺のほうを見て?怖かったよね、でももう大丈夫だから」
「大和が……怖いっ」
「うん。あいつはケンカバカだから、今から止めてくるよ」
「でも、伊織もケガしちゃう……」
これ以上、誰も傷ついてほしくない。
誰のことも、傷つけないでほしい。
そう思うことは、わがままなのかな?
甘い考えなのかな?



