今にも飛びかかりそうな勢いの陽太に、いつもの可愛い様子は一つもなかった。
危険な状況だっていうのに、陽太の顔は心底楽しそうに笑っている。
「……陽太?」
このままだと大騒ぎになってしまう。
この状況を、おさめないと──。
「陽太!」
「やめろ日比野!この女がどうなってもいいのか!?あぁ!?」
「きゃああ!」
陽太に手を伸ばした瞬間、高校生の一人にうしろから思いきり羽交い締めにされてしまった。
人質のように身動きが取れない状況に、『しまった!』と思ったときにはもう手遅れだった。
「……手、離せよ」
ゆっくりと振り返る陽太の怒気に、初めて本気で〝怖い〟と思った。
「ハッ!お前が先に俺らを解放しろ!それから二度と俺らに関わるんじゃねぇ!」
うしろで私を捕まえている彼の声は、かすかに震えていた。
きっとそれくらい、陽太のことが怖いんだ。
「それは無理だよ。僕はお前らを徹底的に潰すって決めたから」
「じゃ、じゃあこの女がどうなってもいいっていうのか!?」
「……」
「分かったら早くそいつらを離し……」
──ドカッ!
鈍い音が、耳元で聞こえた瞬間だった。
そして私を捕まえていた高校生が、まるでスローモーションのように地面に倒れていく。
自由になった私だけど、その場から動くことができなかった。
「お前、誰を人質にとってんのかわかってんだろうな?あぁ!?」
「……やま、と?」



