〝大安寺〟っていう、私のこの苗字。
このあたり一帯の街を、裏側から支配している大きな組織の苗字。
周りの人は、私達のことを《極道》と呼んでいる。
私のおじいちゃんこと、大安寺 大地は、その組織の中で一番偉い人なんだ。
小学校六年生のとき、お父さんとお母さんが飛行機事故で亡くなってしまって、ひとりぼっちになった私を引き取ってくれたおじいちゃん。
おじいちゃんの家が、普通じゃないってことはすぐに分かった。
怖い顔をした人が何人もいて、血が繋がっていないのにみんな『家族』だっていう。
言葉づかいは汚いし、行動は荒っぽくて、最初は本当に怖くてたまらなかった。
……でも、それでもみんな、私にだけは優しくしてくれた。
小学校の宿題を教えてくれたり、料理をしたり、テレビの前で好きなアイドルのダンスを一緒に真似してみたり。
私の周りには常に『家族』の誰かがいて、絶対にひとりぼっちにはさせないようにしてくれている。
みんな不器用で、ガサツで、うるさいけど、いつしか私の本当の家族になってくれていた。
「……っ」
だけど、大安寺家の外へ出たら、私はいつも一人だ。



