「え?」
「どうしたの?誰かに何かされた?それとも体調がよくない?」
そんな私に声をかけてきた、一人の男子。
この学園で、私に声をかけてくるのは三人だけ。
そして、そのうちの二人とはすでにもう会っている。
と、いうことは残すはあと──……。
「(遊佐 伊織、だけ)」
正直、伊織が一番何を考えているのか分からない。
ただ、いつも真っ先に私の元へ駆けつけてくれる。
そして、誰よりも私のことを心配そうな顔で見てくる人。
「何かあったら相談してね」
「……なんでもない」
「泣いてるように見えたのは、俺の気のせい?」
「気のせい!ちょっと目にゴミが入っただけだし!」
「ははっ!そっか」
大和とは正反対な、柔らかそうなサラサラとした黒髪。
婚約者候補の中では一番おとなしそうに見える伊織。
この人も、私との結婚を望んでいるの?



