……あぁ、ダメだ。
今は心が弱り過ぎていて、稲瀬のそんなさりげない言葉にも泣いてしまいそうになる。
いつもなら、絶対に稲瀬に弱いところを見せたりしないのに。
「……稲瀬の言ってたこと、当たってた」
「どんなこと?」
「やっぱりみんな、稲瀬の言うとおり……私と結婚したいのは、若頭になるためだったよ」
涙で視界が揺れて、声が震えた。
もうこれ以上泣きたくないのに、それでも涙は止まってくれない。
私は伊織達に心を開いた。
おじいちゃんに『もう少しあの三人に心を開いてみなさい』って言われたけど、私はおじいちゃんに言われたからそうしたんじゃない。
少しずつ時間をかけて、信頼できる人だと思ったから。
私のことを大切にしてくれて、いろんな言葉を投げかけてくれて、私を孤独から救ってくれたから。
「伊織達がそう言ったの?」
「……うん。おじいちゃんの命令だったって、そうはっきり言った」



