結婚なんて、ゼッタイお断り!






目の前が真っ白になった。



「な、んで……っ」

過度にストレスがかかったせいか、だんだんと呼吸が浅くなっていく。

もう暑い時期なのに、手の指先が冷たくなった。




「……らい」

「聞いて、美桜ちゃん?でもね、俺らは──」

「アンタ達なんて、みんな大嫌い!」




私はそんな言葉を伊織達に投げかけて、帰って来たばかりの家を再び飛び出した。




みんな、私に嘘をついてたんだ。

友達がいなくて寂しかったとき、いつでも俺のところに来いって言ってくれた大和の言葉が嬉しかった。

何かあったら一番に俺を頼ってね、と言ってくれた伊織の言葉に安心をもらえた。

陽太がいつでもピッタリとくっ付いて一緒にいてくれたから、あのつらくて苦しい孤独から抜け出せたのに。






「全部……っ、嘘の言葉だったんだ」


私のことが大切だからとか、そんな気持ちはなかったんだ。

ただ、私と結婚して若頭になりたかっただけ。

私を守ってくれていたのは、ただおじいちゃんの命令だったからなんだ。




心が痛い。

今まで感じたことのないようなズキズキとした痛みが私を襲う。





私は泣きながらひたすら走った。

走って、走って、伊織達から離れたい一心だった。