「どうしてアンタがそのことを知ってるわけ!?」
「だってあの三人は、大安寺家の若頭候補だから」
「若頭、候補?なによ、それ」
「君、本当に自分の家のこと何も知らないんだね」
稲瀬は私をフッと鼻で笑った。
バカにされているみたいで悔しいけれど、私は本当に何も知らない。
ただ、大安寺 大地の孫として、たくさんの人達に守られながら暮らしている。
だけど、どうやらそれだけじゃダメだったみたい。
「大安寺家の若頭に選ばれる人は、いずれその組の組長になる可能性が高い。つまり、若頭に任命された人は、将来大安寺組のトップに立つってことだ」
「その若頭の候補者が、伊織達だってこと?」
「その通り。だけどね、問題なのは、若頭は一人しかなれないってこと」
「え?」
「じゃあ今三人候補がいるけど、どうやって若頭を決めると思う?」
「それは……」
稲瀬も私と同じ、大きな組織の孫だからだろうか。
敵組織の人の言葉なんて、信じたくないけど、でも──。
「──今の組長、大安寺 大地の孫である君と結婚した者」
「そんなっ……」
「そう考えるのが普通だよね」
稲瀬のその言葉だけは、嘘じゃないってすぐに分かった。
なぜなら、稲瀬のその言葉に誰よりも納得してしまったのが……私自身だから。



