「……ゲッ!伊織に大和!?」
浮かれ気分全開で、笹原さん達と一緒にカフェに行こうと教室を出ようとしていたときだった。
うしろからやって来て私を呼び止めたのは伊織と大和だった。
「美桜のやつ、今、俺らを見てゲッて言ったぞ」
「聞かなかったことにしてあげようよ」
そうだ、今日はみんなとカフェに行くから迎えはいらないって言わなくちゃ。
学校の外で待っている護衛二人にも、今日だけはついてこないでって言わないといけない。
「あのね二人とも!私、今日は……」
「──きゃあああ!伊織先輩と大和先輩だ!!」
「うそ!?どうしてここに!?」
「もしかして、大安寺さんを迎えに来た……とか!?」
伊織と大和に今日の放課後は一緒に帰らないことを伝えようとしたとき。
私の声がかき消されるほど、周りにいたみんなの甲高い声が鳴り響いた。
笹原さん達は二人を見て目をキラキラさせている。
「(そういえば、伊織達って女子からすごい人気だったんだ……)」
「おい、これどういう状況だよ」
「あ、えっとね。実は今日は……みんなに誘われて、これからカフェに行くの」
「はぁ!?そんなのダメに決まってんだろ、危ねぇだろうが」
「お、お願い!今日だけ!せっかく誘われたんだから!」
大和は絶対にダメだと言って、私の話を聞こうともしない。
……あぁ、もう!
こういうとき、本当に困っちゃう。
「(いっそこのまま走って逃げちゃおうかな)」
「……いいよ、美桜ちゃん。行っておいでよ」
「え!?本当にいいの伊織!?」
「うん。その代わり、帰るときは俺達を呼んでくれる?迎えに行くから」
「やった、ありがとう伊織!じゃあまた連絡するね!」
「おい、伊織!勝手なこと言うなよ」
「美桜ちゃんにとって、こういう経験ははじめてのことなんだよ。応援してあげないと」
「……チッ。いいな、美桜。ぜってぇちゃんと連絡入れろよな」
「うん!じゃ、またあとでね!」



