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「だから、そんなの向かってくるボールを見てボンッて打つだけだろうが」
「大和の説明って本当に意味不明!もっと分かりやすく説明してよ!」
「じゃあ僕が教えてあげるよー!美桜ちゃん見てて!」
「陽太は私と同じくらいソフトボール下手じゃん!」
今日は伊織達と四人で、大安寺組が所有する広場に来ている。
もうすぐ、私の学校でクラス対抗のソフトボール大会が行われるからだ。
ソフトボールなんて一度もやっとことのない私は、伊織と大和に教わることになった。
「ボールが投げられる前に、バッドを振る準備をしておくんだよ。ボールを見てから打つって意識すると、どうしても遅れちゃうからね」
「な、なるほど!」
「なんでそんな大きいバッドとボール使ってるくせに一回も当たんねぇんだよ。逆に不思議だぜ」
「……くっ!大和ってば、ちょっと自分が運動できるからって、むかつく!」
「美桜ちゃん、もう一回バッドを振る練習からしてみようか」
「うん、そうする……」
いくら未だに友達ができないからと言って、クラスの足を引っ張るようなことだけはしたくない。
そんな思いで、一生懸命練習しているんだけど……。
「(うまくできない。腕も痛くなってきたし)」
でも、最近はいつも四人で一緒にいるようになった。
学校では同じクラスの陽太が話し相手になってくれて、伊織と大和も休み時間になると私の教室まで顔を出してくれる。
「(そのおかげで、学校に行くのが少しだけ楽しいって思てる)」
こんな楽しい時間が、ずっと続けばいいのに。
でも、私の現実はそう甘くはなかったんだ──。



