「……あれ、美桜ちゃんがまだ帰ってこない」
その日、俺は陽太の風邪の看病を任されていて、美桜ちゃんの護衛にはついていなかった。
美桜ちゃん達が住んでいる本家から少し離れた場所にある、俺や大和達が住んでいる家。
この家の二階の窓から、美桜ちゃんが登下校している様子が見えるようになっている。
美桜ちゃんは護衛を嫌っていて、朝と夜の送り迎えもいらないと言って歩いて学校へ通っている。
いつもなら、平日の夕方には家に帰ってくるはずだ。
だけど、今日はまだ帰ってくる気配がない。
「……陽太、ごめん。ちょっと外に行ってくる」
「はーい。じゃあスポーツドリンク買ってきてぇ。あとプリンとポテチ」
「うん、分かった」
心臓が痛いくらいに脈を打つ。
嫌な予感がしてならなかった。
家を出て、いたるところを探し回った。
そして、大通りから一本離れた裏路地についたとき。



