伊東甲子太郎が入隊してから、新選組の内部に微かな変化が生まれつつあった。
表向きは変わらず、新選組は幕府のために京の治安維持を続けていた。しかし、隊士たちの間で、少しずつ意見の違いが生まれ始めているのを俺は感じていた。
それは、伊東が入ってきたことと無関係ではなかった。
◇
「なあ、春樹。」
屯所の中庭で、何人かの隊士と共に剣の稽古をしていた俺に、永倉さんが声をかけてきた。
「お前、最近の新選組についてどう思う?」
「最近の……?」
俺は剣を収め、永倉さんの顔を見た。
「なんかさ、伊東先生が入ってから雰囲気が変わった気がしねえか?」
「……ああ。」
俺も同じことを感じていた。
「伊東さんの考え方は、今までの新選組とは違う。」
「そうだな。」
永倉さんは腕を組み、難しい顔をした。
「俺はさ、新選組ってのは剣で京を守る組織だと思ってたんだよ。でも、伊東先生はやたらと政治の話をする。」
「確かに……。」
最近の屯所では、伊東を中心に"幕府の未来"について議論する場面が増えてきていた。
「幕府の力はもう衰えている。これからの日本は、新しい体制が必要だ——」
そんな言葉を、伊東は繰り返していた。
それに賛同する隊士も少しずつ増えてきている。
「土方さんは何も言ってねえのか?」
俺が聞くと、永倉さんは小さく肩をすくめた。
「さあな。ただ、あの人が黙っているってことは、何か考えてるんだろう。」
「……だよな。」
土方さんが何も感じていないはずがない。
だが、俺は心のどこかで不安を拭えなかった。
◇
「春樹。」
その夜、そうちゃん——総司が俺を呼び止めた。
「……なんだ?」
「伊東さんと、その周りの隊士たち。やっぱり、新選組の中で別の考えを持ち始めてるよ。」
「……お前も、そう思うか。」
俺はため息をついた。
「どうする?このまま放っておくのか?」
「放っておくわけにはいかない。でも……」
そうちゃんは少し言葉を選びながら続けた。
「今はまだ、動くべき時じゃないと思う。」
「……どういうことだ?」
「伊東さんは、表向きは新選組の一員として動いてる。でも、本当に彼が何を考えているのかは、まだはっきりしていない。下手に刺激すれば、新選組の中で衝突が起きるかもしれない。」
「……。」
確かに、それは避けたい。
俺たち新選組は一枚岩であるべきだ。
だが、もし内部から崩れていくとしたら——
「しばらく様子を見よう。」
そうちゃんは静かに言った。
「でも、もし何かあれば——私たちで止めるしかない。」
その言葉に、俺は無言で頷いた。
伊東甲子太郎という男が、新選組にもたらすものは何なのか。
それは、俺たちがこれから直面する大きな問題になるのかもしれない。
表向きは変わらず、新選組は幕府のために京の治安維持を続けていた。しかし、隊士たちの間で、少しずつ意見の違いが生まれ始めているのを俺は感じていた。
それは、伊東が入ってきたことと無関係ではなかった。
◇
「なあ、春樹。」
屯所の中庭で、何人かの隊士と共に剣の稽古をしていた俺に、永倉さんが声をかけてきた。
「お前、最近の新選組についてどう思う?」
「最近の……?」
俺は剣を収め、永倉さんの顔を見た。
「なんかさ、伊東先生が入ってから雰囲気が変わった気がしねえか?」
「……ああ。」
俺も同じことを感じていた。
「伊東さんの考え方は、今までの新選組とは違う。」
「そうだな。」
永倉さんは腕を組み、難しい顔をした。
「俺はさ、新選組ってのは剣で京を守る組織だと思ってたんだよ。でも、伊東先生はやたらと政治の話をする。」
「確かに……。」
最近の屯所では、伊東を中心に"幕府の未来"について議論する場面が増えてきていた。
「幕府の力はもう衰えている。これからの日本は、新しい体制が必要だ——」
そんな言葉を、伊東は繰り返していた。
それに賛同する隊士も少しずつ増えてきている。
「土方さんは何も言ってねえのか?」
俺が聞くと、永倉さんは小さく肩をすくめた。
「さあな。ただ、あの人が黙っているってことは、何か考えてるんだろう。」
「……だよな。」
土方さんが何も感じていないはずがない。
だが、俺は心のどこかで不安を拭えなかった。
◇
「春樹。」
その夜、そうちゃん——総司が俺を呼び止めた。
「……なんだ?」
「伊東さんと、その周りの隊士たち。やっぱり、新選組の中で別の考えを持ち始めてるよ。」
「……お前も、そう思うか。」
俺はため息をついた。
「どうする?このまま放っておくのか?」
「放っておくわけにはいかない。でも……」
そうちゃんは少し言葉を選びながら続けた。
「今はまだ、動くべき時じゃないと思う。」
「……どういうことだ?」
「伊東さんは、表向きは新選組の一員として動いてる。でも、本当に彼が何を考えているのかは、まだはっきりしていない。下手に刺激すれば、新選組の中で衝突が起きるかもしれない。」
「……。」
確かに、それは避けたい。
俺たち新選組は一枚岩であるべきだ。
だが、もし内部から崩れていくとしたら——
「しばらく様子を見よう。」
そうちゃんは静かに言った。
「でも、もし何かあれば——私たちで止めるしかない。」
その言葉に、俺は無言で頷いた。
伊東甲子太郎という男が、新選組にもたらすものは何なのか。
それは、俺たちがこれから直面する大きな問題になるのかもしれない。

