「……あれ? わたし、まだ生きてる?」
そうつぶやいて視線を落とした音無さんは、そこでようやく、自分の身体が透けていることに気づいたみたいだ。
ぎょっとした顔をして、自分の手を開いたり握りしめたりしている。
「え、何これどういうこと? もしかしてわたし、お化けにでもなっちゃったってこと……!?」
音無さんが混乱している間に、俺は一歩、二歩と距離を縮めて、音無さんの目の前で立ち止まる。
自分の手のひらに落としていた視線を持ち上げた音無さんは、俺の顔を見て、その大きな目をさらに見開いた。
「あ、浅羽くん? どうして泣いてるの? もしかしてどこか痛いとか? だれかに何かされたの……?」
――何ていうか……こんな時にまで、自分のことより俺の心配をしちゃうところが音無さんらしいな。
俺は頬を流れる涙をぬぐって、音無さんに向き合う。



