ぜんぶぜんぶ――音無さんの行動は、俺を助けるためのものだったのか。 頬を熱いものが伝う。 流れる涙を拭っていれば、また景色が変わった。 それは一番はじめに見た、神社での光景の続きだった。 『いいだろう。だが、もし――――なかったら、お主(ぬし)が代わりに――――。それでもいいのか?』 どこか安心するような、おだやかで落ち着いた声が、鼓膜をくすぐった。 その言葉に、音無さんが「はい」とはっきり応えた声を最後に、俺の意識は暗転した。