「は? っ、何だよ、これ……」
突然、頭の中に、何かが流れ込んできた。
それは、だれかの記憶のようだ。
「――お願いします、どうか、どうか浅羽くんを助けてください……!」
雨が降りしきる中。音無さんは傘もささずにずぶ濡れになりながら、涙を流して祈っていた。
すると、神様がまつられている本殿の方が、ぱぁっと淡い光を放った。
「っ、本当ですか? ……お願いします、わたし、何でもします! 過去に戻って、わたしが、浅羽くんを救ってみせます……!」
――過去に戻る? 俺を救う?
音無さんの言っていることが理解できなくて、その光景を呆然と見つめていれば、今度は景色が変わった。
目の前にいた音無さんがいなくなり、代わりに見えたのは――俺だ。
教室で、頭に包帯をぐるぐる巻きつけている俺が、窓際の席に腰掛けている。
「浅羽のやつ、あれ、どうしたんだろーな」
「何か昨日、上から植木鉢が落っこちてきたらしいぞ」
「うっわぁ、運が悪かったなぁ」
遠目で俺を見ている男子生徒が、コソコソと話している声が聞こえてくる。
そして、また景色が変わった。



